アジア人を採用した際のコミュニケーション方法について徹底解説!

外国アジア人とのコミュニケーション方法がわからない…

そのようなお悩みはありませんか?

アジア諸国出身の方と日本人が一緒に働く職場は、珍しくなくなってきました。
それでも、異なった文化の壁を越えてのコミュニケーションをもどかしく感じている人は少なくありません。

本記事では、そんなモヤモヤを解消して双方がいきいきと働ける職場にしていくためのテクニックをご紹介します。

運営会社:株式会社マックス

執筆:株式会社マックス
創業25年の外国人人材紹介・派遣会社。
人材派遣、特定技能受入れ支援(登録支援機関)、高度外国籍人材紹介、教育・研修など外国籍人材に関わるさまざまな事業を展開。
採用を検討している企業様に対しワンストップのサポートを提供している。

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人材派遣、特定技能受入れ支援(登録支援機関)、高度外国籍人材紹介、教育・研修など外国籍人材に関わるさまざまな事業を展開。

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日本もアジア諸国も「空気を読む文化」しかし「読んでいる空気」が違う

世界には多くの国、さまざまな文化がありますが、大きく分けて「空気を読む文化」と「空気を読まない文化」に区別されると思います。

「空気を読む文化」とは

「空気を読む文化」とは、コミュニケーションに際して様々な背景を前提にするため、実際のコミュニケーションはシンプルになるような文化です。

日本がその典型で、暗黙の了解を前提にしているので、細かな説明は省かれる傾向があります。専門的にはハイコンテクストの文化と言われています(コンテクストとは前提となる文化的背景とお考えください)。

「空気を読まない文化」とは

それに対して「空気を読まない文化」とは、コミュニケーションにはなるべく文化的前提を置かず、その都度細かな説明を行って誤解を避けようとする文化です。

欧米がその典型です。ビジネスにおいても契約書は分厚くなり、採用に際しては職務規定書(ジョブ・ディスクリプション)に遂行すべき業務が細かく規定されています(これをローコンテクストの文化と呼びます。)

アジア諸国と一言で言ってもたくさんの国がありますが、総じて「空気を読む文化」に属すると言っていいでしょう。ビジネスの場においても、細かな点まで事前に言葉で詰めておく、ということはありません。

私は、ハイコンテクストの権化のような米国に通算15年滞在した後、ベトナムで9年間働いたので、その違いを身をもって体験しました。
(日本はハイコンテクストと言っても、ビジネスの場では文書化やマニュアル化がそれなりに進んでローコンテクスト化している部分もあります。日本に比べるとベトナムは、この分野では発展途上と言えるので、日本から米国に行った時よりも、米国からベトナムに行った時の方が、ローコンテクスト文化とハイコンテクスト文化の違いを実感しました)

では、日本も「空気を読む文化」、ベトナムも「空気を読む文化」なので話がよく通じるかと言うと、必ずしもそうではありません。私の場合、外国人慣れしたホテルやレストランでは問題なかったのですが、地方の銀行に赴任して、現地の役職員やお客様と接するようになると、もう問題続出です。お互い合意したと思っていたのに、後になって「考えていたことと違っていた!」「なんでそうなるの?」ということが頻発しました。米国ではそんなことはなかったのです。

どうしてでしょう?

それは日本もベトナムも「空気を読む文化」という点では同じなのですが、「読んでいる空気」、すなわち前提となっている文化的背景が大きく異なっていたからです。
(このことは赴任中にはよくわからず、相手側の対応にずっとモヤモヤしていたのですが、日本に帰国して銀行の研修所に配属になり、外国人役職員を対象とした「日本の企業文化理解」の研修を担当するようになって気づきました。)

本記事では、アジア諸国と日本の文化の違いとそれがビジネスに与える影響を解説し、これらの地域から日本に働きに来られている方々とのコミュニケーションを改善する方法をご紹介します。

なお、アジア諸国と言っても、国によって当然違いはありますし、私が実際に現地で働いたことがあるのはベトナムだけです。それでも、ベトナム、中国、台湾、インドネシア、ミャンマー、カンボジアなど多くのアジア諸国出身者からなるマックス㈱スタッフと一緒に働き、話を聴いていると、日本以外のアジア諸国間の文化の違いに比べると、これらの国々と日本の間の文化の違いの方が圧倒的に大きいと感じます。それは、日本が極東の島国であることやアジアの中では早い段階から西洋式近代化に取り組んだことが関係しているのかもしれません。そのため、この記事では個々の国々の文化の違いには触れずに「アジア諸国(=日本以外のアジアの国々)の文化」と日本の文化との違いという括りで解説していますのでご了承ください。

文化の違いからくる誤解を避けるには?

【解決策その①】「空気を読まない」ローコンテクストなコミュニケーションに努める

「空気を読む文化」と「(違う)空気を読む文化」の接触からくるコミュニケーション上の齟齬を避ける最もよい方法は、できるだけ「空気を読まない」、ローコンテクストなコミュニケーションに努めることです。
(そもそもローコンテクストな文化であるヨーロッパの文化は、ゲルマン民族の大移動に象徴されるように古くから様々な人種、言語が入り混じってできあがった文化でした。「移民の国」と呼ばれることもある米国の文化は、それ以上に混淆しています。ローコンテクストなコミュニケーションは、多様な文化がまじりあった地域に適したコミュニケーションなのです。)

では、日本にいながら あえて「空気を読まない」、ローコンテクストなコミュニケーションを実行するには、どうしたらいいのでしょうか?

まず、社内ルールやマニュアルを「やさしい日本語」にします。「難しい言葉を避けて簡単な言葉を使う」「一つの文を短くして、文の構造を簡単にする」「漢字には必ずフリガナをふる」ことなどにより、外国人にとってもわかりやすくするわけです。「やさしい日本語」は、日常的に外国人と接することが多くなった地方自治体で普及が進み、各自治体はWEBサイトなどでそのガイドラインを公開しています。「やさしい日本語」で検索して、気に入ったわかりやすい言い換えテクニックを参考にするのがよいでしょう。

逆に「当社のマニュアルは分厚すぎて全部書き直すのは大変」という会社は、その中から特に重要な項目を7つくらい選んで「やさしい日本語」に書き換えてはいかがでしょうか? 

7つというのは特に根拠はないのですが、㈱マックスのお取引先で「当社の7つのルール」を作成して、外国人主体の工場をうまく稼働させているお客様がいらっしゃるので、参考にさせていただきました。

書き換えに際しては、「ここは外国人にはわかりにくいかも」という箇所に補足を入れ、文化的前提の違いによる理解不足を避けるようにするのも大切です。

【解決策その②】日常のコミュニケーションでもローコンテクストな会話を心がける

ルールやマニュアルのローコンテクスト化に加え、日常のコミュニケーションでもローコンテクストな会話を心がけることは大切です。

指示を与える際にも「やさしい日本語」を使い、「何を、どこで、いつまでに、どうやって」を明確に伝えることで、多くの誤解を避けることできますが、それはわかっていても、やはり我々は日本人、四六時中ローコンテクストのコミュニケーションをしていてはそれだけで疲れてしまって仕事になりません。

そんな時でも、お互いの文化の違いを理解しておけば、たとえ摩擦が発生することがあったとしても、それが大きなトラブルに発展する事態は避けることができます。

以降のこの記事では、日本と他のアジア諸国の文化の違いがビジネス面でどのような誤解を生みやすいか、それを回避するにはどういう方策があるかを紹介していきます。

日本と他のアジア諸国との企業文化の7つ違い

日本と他のアジア諸国との企業文化の違いには以下の7つがあります。

7つの違い
①偉い人はどれだけ偉い?
②仕事への思い入れとワークライフ・バランス
③同僚の前で間違いを指摘されても大丈夫?
④先の見えない状況に耐えられるか?
⑤時間に対する感覚の違い
⑥人間関係「命」のアジア諸国と「人間関係+職務遂行能力」の日本
⑦「親しき中にも礼儀あり」は日本だけ?

それぞれ解説していきます。

【違いその①】偉い人はどれだけ偉い?

上司は偉い、課長より部長が偉い、部長より専務が偉い、専務より社長が偉い、これは日本も他のアジア諸国も同じです。共に序列重視社会です。

しかし実感としては、アジア諸国の上司の方が、日本の上司よりも圧倒的にパワーをもっているように思います。それは、日本の会社の意思決定が合意志向で権限移譲もはっきりしていないのに対して、アジア諸国の会社の意思決定はトップダウンで、権限移譲も進んでいるからです。言うならば、アジア諸国の上司は「すごく偉い」のに対して日本の上司は「偉いんだけどそれほど偉くはない」のです。

ではこのことが、ビジネスの現場にどのような影響を与えるのでしょうか?

例えば、工場で一見原因不明のトラブルが発生した際に、ミスをした人が「私が間違いました」と名乗り出ることができるか?といったケースで典型的に現れます。

日本人社員の場合、自ら名乗り出ることが多いでしょう。いずれ原因は特定されますし、黙っていて名乗り出ないと「何で早く言わなかったんだ」と、ミスを犯したことに加え、報告の遅れたことで評価を更に下げてしまうからです。

しかし、多くのアジア諸国の企業文化においては、自発的にミスを認めることは非常に難しいと言わざるをえません。嘘を言って責任を回避しようとすることすらあります。

ミスをしたことが知れると上司の逆鱗に触れ、解雇されてしまうリスクが高いからです。多くの上司が現場を経験して昇格していく日本に比べ、上司が始めから管理職として配属される国々では、原因究明にも限界があり、原因不明のまま有耶無耶のうちに処理されてしまうことも多いという事情も影響しているかもしれません。

下に働く者は積極的にミスを申告すると損、となりがちな文化なのです。

では、日本で働く外国人の方にも積極的にミスを自己申告してもらうようにするにはどうしたらよいでしょうか? 

まず、ミスを犯したからといって、すぐに解雇したり帰国させたりすることはない、ということを予め伝えておきましょう。いわゆる心理的安全性を確保しておくわけです。

逆に、ミスを隠そうとして誤魔化したり嘘を言ったりすると、信用を重視する日本企業では評価が低くなり、契約更新の時などに不利であることも伝えておきましょう。

上司も現場に入って、一緒に問題を解決する仲間であるという姿勢を見せると、文化は違っても、自己申告の重要性をわかってもらえると思います。

【違いその②】仕事への思い入れとワークライフ・バランス

これは、以前から一般的に言われていることでもありますが、日本ではアジア諸国に比べて仕事に対して求められる水準が高く、またその高い水準を達成することに大きな満足感を覚える人が多いと思います。仕事ができる人は、尊敬を集めます。

一方、アジア諸国では、家族とリラックスした楽しい時間を過ごすことを最重視する傾向があります。

日本人の仕事好き、仕事に対する使命感ともいえる思い入れは、それ自体は美徳なのですが、トラブルが発生すると誤解を受けることがありますので注意しましょう。と言いますのは、トラブルが発生すると、早く解決しようと熱心になるあまり、声を張り上げたり、興奮して怒鳴ってしまったりということが起こりがちだからです。

日本人同士なら、仕事に対する熱心さと受け取ってもらえる態度でも、アジア諸国の人から見ると、不適切極まりない態度と映ってしまうことがあります。

アジア諸国では、危機に際しても悠然と対処できるリーダーが大人であり、高く評価されます。
怒鳴ったり、怒ったりする人は、「子供っぽい」人として尊敬されません。これは、私がベトナムで身をもって体験した教訓でもあります。

なので、問題解決に外国人社員の協力が必要な場合は、ゆったりと構えて安心感を与えつつ的確な指示を出した方が、結局より早いトラブル・シューティングにつながることが多いと言えます。

【違いその③】同僚の前で間違いを指摘されても大丈夫?

日本では、部下に対して同僚がいる前で注意したり、叱責したりことが一般的に行われていますが、ほとんどのアジア諸国出身の社員に対してはNGです(訓練中に手順を間違えたのを指摘したりするのは問題ありません)。

注意・叱責は個別に呼んで行うことが望ましいです。

このことは、ベトナムを舞台にしたNHKのテレビドラマ(実話に基づく)から教えられました(思い当たることが多く、ドッキリ)。

主人公の日本人眼科医 服部(濱田岳)は、ボランティアで出張していたベトナムの古都フエにある眼科病院での執刀中、助手であるベトナム人青年医師を叱責してしまう。青年医師が、オペに必要な器具の一つを手元に揃えておくのを失念していたからであった。

叱声のとたん、オペのスタッフ一同の表情が曇り、青年医師は反抗的な表情を見せる。

手術後服部は、日本語が話せるベトナム人看護婦から、「ベトナムの人は、皆の前で叱られると落ち込んでしまいます。褒められると元気がでます」と教えられる。

日本人であれば、「患者ファーストが当然で、オペに支障をきたすミスがあったら叱られても当然」と考えるところですが、そういう緊迫した場面であっても、他の人がいる前で叱るのはタブー、という文化が多いことは知っておいた方がよいと思います。

ドラマでは、その後 服部医師は、部下の良いところをチームの前で褒めるようになり、チーム全体の士気も高まっていく様子が描かれていました。

【違いその④】先の見えない状況に耐えられるか?

皆さんは、「①先がある程度見通せる状況」と「②先が読めない状況」を選べるとしたらどちらを選びますか? あるいは「①ルールが定まっている職場」と「②ルールはないけど自己責任の職場」だとどちらの方が快適に働けますか?

日本人の多くは①を選ぶと言われています。将来の不安をできるだけ減らしたいと考えるからです。

そこから、ビジネスにおいては次のような傾向が生まれます。

  • ルールがあった方が安心できる
  • 前例に従う方が安心できる
  • 失敗が怖いのでリスクが取れない
  • 心配性なのでいつもストレスにさらされている

ところが、他のアジア諸国では「先が見通せない方がワクワクする」人が多いのです。

その結果ビジネスにおいても、

  • ルールは少ない方が好きにできて楽しい
  • 前例にこだわらず自分の好きにやりたい
  • 成功するためにはリスクも取る
  • ポジティブ思考でリラックス

といった傾向が見られます。

では、この日本人の「心配性」、アジア諸国の「楽天性」がビジネスの場でどういう摩擦を生むかというと、典型的なケースは、「問題ないか?」「問題ありません!」問題に現れます。

日本人上司が言うハイコンテクストなメッセージ「問題ないか?」をローコンテクストに翻訳すると「納入期限がずれ込む可能性が出てきたとか、コストが見積もりをオーバーしそうだ、とかどんな小さなことでも、可能性が低いことでも、可能性が出てきたのであれば、今すぐ教えてくれ。」ということかと思います。

これに対してアジア諸国出身社員のハイコンテクストな答えである「問題ありません!」をローコンテクストに翻訳すると「まだ確認していないことや、当初の想定から少しずれてきた点はありますが、たいしたことではありません。大きな問題になりそうになったら報告します。」というところでしょうか。

同じ「問題ある/ない」という言葉を使っていても、その意味するところは、日本人とアジア諸国の人の間で大きく異なるのです。

こうなってくると、いざ問題が発生した時に

「問題ないと言ってたじゃないか」
「あの時は問題なかったんです。」

という会話が交わされることになります。

この不毛の会話を繰り返さないためには、より具体的で、ローコンテクストな質問をするようにするのがいいでしょう。「スケジュールどおりに進んでいるか?」「コストの見積もりオーバーする出費の可能性はないか?」などの具体的な質問をすると、聞かれた方もいったん考えたうえでローコンテクストな答えを返してくれると思います。

「ルールがあった方が安心」と考える日本人と、「ルールが少ない方が自由にできて楽しい」と考えるアジア諸国の方たちの間には「作業手順」や「マニュアル」に対する感覚も違ってきます。

アジア諸国の方たちの中には、「作業手順」や「マニュアル」は「面倒くさいもの」と考える人も多く、中には、「こっちの方が効率的」、「こっちの方が簡単」、と勝手に自分流に変えてしまう人も出てきかねません。

派遣会社では、作業手順の変更は厳禁、と厳しく教育していますが、現場においても、「どうしてこういうルールになっているのか」「この手順を守らないとどういう事故が起こってしまうのか」など過去の教訓も含む、ストーリーとして伝えていただくと、理解が深まって、逸脱へのいっそうの抑止力になると思います。

【違いその⑤】時間に対する感覚の違い

時間に対する感覚は、日本人と他のアジア諸国出身者では大きく異なります。

日本は明治維新とともに近代産業・西洋式学校制度・軍隊制度を導入し、それとともに時間厳守の感覚が国民全体に浸透したので、今の日本人の時間厳守の習慣は、欧米人かそれ以上だと思います。

時間厳守は商品生産・商業サービス提供の効率化・品質向上に大きく貢献しますので、企業文化においても重要な役割を果たしています。

これに対して、他のアジア諸国では「時間には柔軟に対処」というのが一般的です。

特に農村部では、機械的な時間よりも日の出・日の入りといった自然に沿った時間が重要で、様々な自然事象に対する柔軟な対応が求められます。「5時と言ったら5時だ」一点張りの人は、融通の利かない、臨機応変な対応ができない、ダメ人間と見放されてしまいます。

この文化の違いがビジネスに与える影響は、容易に想像がつきますね。

例えば、工場の規則が「出勤時間は8時」と定められているとすると、このハイコンテクスト・メッセージの日本人の理解をローコンテクストに翻訳すると、「一人でも時間に遅れると、作業が開始できず、大変困ります。余裕をもって出勤し、8時には現場にいてすぐ働けるように準備完了でいてください。」というところでしょうか。

一方、アジア諸国出身社員の理解をローコンテクストに変換すると「8時には行けるようにしますが、やむを得ない事情があれば、5分~10分遅れても、大きな問題にはならないでしょう。」あたりが一般的かと思います。5~10分は、国によってはさらに大きな数字になります。

もちろん、㈱マックスのような派遣会社から派遣される外国人社員には、時間厳守の重要性を徹底的に教育しています。それでも、体に浸み込んだコンテクストから自由になることがなかなかできない人が稀に出てきます

そんな人が、来日して間もない時、5分遅刻したからといって「社会人失格だ」などと人格を否定されるような叱責を受けたりすると、そのダメージは計り知れません。大勢の前での叱責となるとなおさらです。

そんなダメージが、その後の勤労意欲や勤務態度に悪い影響を与えないよう、初期の遅刻に対しては、「他の仲間にも迷惑をかける」「安全な作業を維持していくうえで必要不可欠」など、諄々と指導するのがよいと思います。

派遣先にも連絡して、再発を防止しましょう。

指導しても遅刻を繰り返したり、他にもトラブルを起こしたりするような問題社員に対して、厳しい人事処分を課すのは当然です。

【違いその⑥】人間関係「命」のアジア諸国と「人間関係+職務遂行能力」の日本

人間関係を重視するのは、日本も他のアジア諸国も同じです。

しかし、アジア諸国の場合は会社といった「組織」が絡んできても、まず人間関係が優先されるのに対して、日本の場合は「組織」の論理も同程度に重視されます。

例えば、多くのアジア諸国の企業のトップ同士が個人的に親しくなり、その後、企業取引に関する合意に達したとすると、その取引はほぼ確実に成立するのに対し、日本企業においては、トップ同士の人間関係が成立していても、個別の取引が成立するかどうかは、それぞれの担当部門の起案する取引案を双方の組織が承認するかにかかっています。

つまり、人間関係があることはプラスに働きますが、企業取引自体には組織の論理が働くのです。

職場においても日本では、人間関係だけで物事が決まるケースは稀です。これに関しては私が以前勤務していた金融機関の東南アジアの支店で現地人の従業員からよく聞いた話があります。

それは支店の飲み会があり、日本人の支店長と徹底的に飲んで意気投合しました。これで私は支店長と「タメ」になったと喜び、翌日勇んで出社したが、自分と接する態度は今までのままだったのでがっかりした。あの盛り上がりはいったい何だったんだ?というものです。

相手と親しくなることは、双方にプラスに働くが、それが職場での扱いに直ちに反映することはない、ということは日本人にとっては当然ではありますが、他のアジア諸国出身の方にとっては物足りなく思うことがある、ということは知っておいた方がいいかもしれません。

「酒の上」とはいえ空手形を切ったりすると、実現しなかった後の失望感は日本人以上のものとなるので、注意しましょう。とはいえ、昨今の若手日本人社員に比べますと、アジア出身者は会社が催す宴会やお誕生会が大好きです。コミュニケーションの活性化に活用しない手はありません。

人間関係ということで言いますと、アジア諸国の家族関係の濃密さというのも今の日本人との文化面での大きな違いのように感じます。

お互いに助け合う精神といい、親子兄弟姉妹を超えた親族関係の広さといい、核家族が一般的となった我々には想像しがたい親密感があります。

職場において気を付けたいのは、「姉の結婚式に出席したい」「祖父の葬儀に参加したい」といった冠婚葬祭に関する休暇の申請があった時です。そのまま認可できれば問題ありませんが、職場の事情で希望に沿えないこともあるでしょう。その場合には、それが相手にとっていかに重要なことであるかを理解していることを態度で示し、可能な限りの手を尽くしたが、これだけしかできない、ということを誠心誠意伝えることが大事です。事務的でそっけない対応はNGです。

【違いその⑦】「親しき中にも礼儀あり」は日本だけ?

日本では、職業上親しくなった人でも、企業対企業のコミュニケーションや付き合いにおいては、友人関係を捨象して接します。話すときもお互いに「敬語」を使います

一方、多くのアジア諸国においては、職業上親しくなった人でも「友人」とみなし、「友達言葉」になります。そうしないと「よそよそしく」感じられ、友達でなくなったように感じられるからです。

これは相手が日本人であっても同じで、アジア諸国出身の方は、お取引先との電話でも、いったん相手と親しくなると「敬語」を使わなくなる傾向が見られます。日本人はあまりそういう発想をしないので、普段親しくしているとはいえ取引先の外国人から「タメ口」をきかれるとむっとするかもしれません。

「日本では「親しき中にも礼儀あり」と言われていますよ」とアドバイスし、相手と親しくなってからも、他社の人と業務上の会話をする時は「敬語」を使うよう指導しましょう。

職場での挨拶も同様で、親しくなると堅苦しい挨拶をしなくなる傾向があります(それを親密感の現れ、とする文化は多い)が、日本では、挨拶励行が社会人マナーの基本中の基本とされていますので、㈱マックスでは、親しくなっても挨拶は必ずする、会社だけではなく、寮やアパートの隣人にも挨拶を続けると「ちゃんとした人」と認識され、いいことがあるよ、と指導しています。

最後に、実害のない例をご紹介すると、「お土産をもらったらお礼を言うか」問題があります。

日本では、休暇を取って旅行に行った後出社して同僚に土産のお菓子を配ったら「ありがとう」とお礼を言われますね。疑問の余地がありません。ところが受け取る同僚がアジア諸国出身の同僚だったら「・・・・・」の反応が普通です。配る側からすると、拍子抜けしてしまうような塩対応ですが、これも、職場の同僚は友人、友人と言えば家族も同然、家族間ではお礼を言わない、大げさにお礼を言うと「水臭い」と思われる、という発想からすると、当然の反応なのです。

この展開は日本人にとって予想外ですが、ビジネスの場では問題が生じないので、特に対応する必要はありません。反応がない場合に、「付き合いにくい奴だ」と怒ったり、「何かまずいものをあげてしまったのだろうか」と悩んだりしなければいいだけです。相手が日本に慣れてくるに従って、反応が返ってくることが多くなります。


日本と他のアジア諸国のビジネスコミュニケーションにおける文化的な違いを理解することで、コミュニケーションのモヤモヤを解消して、双方がいきいきと働ける職場を作ることが可能です。

異文化間でのビジネスコミュニケーションを改善することは、より生産的な職場環境を作り、企業の業績を向上できるメリットがあります。

株式会社マックスでは、企業様それぞれのご相談を基に最適な人材活用のご提案を行っております。外国人採用でお悩みの方はお気軽にご相談ください。→株式会社マックスに相談(無料)

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